「立派だろう? 僕は、先祖を誇りに思うよ」

稀に見る素晴らしい本に出会ったのでちょっと紹介でも。またか、と思われそうですが、森博嗣の「カクレカラクリ」です。コカコーラが120周年であることを記念しての森博嗣とのコラボ作品で、9月13日に映像版がTBS系で放送されたらしいのですがそれは見ていません。まぁ2時間程度に収めるのが無理がありそうですけれど。コラボ作品だけあって、コカコーラや120年というキーワードが随所に現れます。森博嗣が書くと言っても、今回は別に誰かが死ぬわけではありません(笑) 謎解きも簡単なのですが、やはり書いてあることが凄いですね。今のところ彼以外のミステリ作家でこれを書ける人を私は知りません。雰囲気は「封印再度」に通じるものがあるように感じられました。なんて言っても分からない人が多いでしょうね。万人に薦められるものではありませんが、しかし特にエンジニアの方は、読んでも決して損にはならないと思います。今日のタイトルは、作中で私が一番感動したシーンの台詞です。もはや現代では誇りに思うどころか、100年前の先祖が何をしたかすら伝わらないことがほとんどではないでしょうか。

もう1つ、私が今読んでるのがあって、古川日出男の「サウンドトラック」と言う作品です。本屋で眺めていて表紙が田島昭宇だったので思わず手にとってしまいました。その後パラパラとめくってあまり考えずに購入。文庫としては初の「ジャケ買い」になります。この古川日出男という人の本は今まで読んだことがなかったのですが、もっとほかの作品を読みたくなりましたね。内容としては無人島に二人の子供が漂流するという言うなればアリキタリなスタートから、思わぬ展開に進みます。村上龍の「5分後の世界」を思い出すような異質な世界、異様な東京を舞台にして、価値観を震わすダンスや、畏れを呼び覚ますカラスと写真銃のコンビが世界をますます変容させていくという、とてもユニークな構想になっています。文体はやや唐突な印象がありますが、その代わりに速度が維持されています。様々な動物たちが重要な要素を占めているのも面白いところです。誰が決めたのか知りませんが読書の秋なんて言うくらいですし、新しい作家を開拓したい人は読んでみられてはいかがでしょうか。